2nd seasonの人生

人生最悪の出来事が起こった時、人間はどう生きるのか。

君へ贈る最後の言葉

この世は理不尽だ。

どんなに願っても叶わないものは叶わない。叶うものは叶う。奇跡など存在しない。全てのことにはきちんとした科学的根拠がついて、物理学・医学・化学、なんらかの学問で説明がつく。

 

繰り返すが、

奇跡はこの世に存在しない。

自分自身が、あるいはご家族が、友人が、もう治らないと医者から宣告を受けた人なら最も最初に受け止めなければならない課題であって、死の次に最大の課題だと思っている。何も尽くす手がなくて、ただただ見ていることしかできないのは辛い。どこの誰だか名前すら知らない人であっても。親しい人であれば尚更。

 

僕は今年11月までの11ヶ月間で8人の戦友を失った。

 

本来であればもっと生きられた(かもしれない)8人の戦友。

本来であればもっと楽しい時を過ごせた(かもしれない)8人の戦友。

新型コロナウイルスが蔓延し始めてから、僕は彼らに会うことはなかった。というかできなかった。社会と関わって生きていた以上、感染の可能性は否定できなかった。彼らは小さなウイルスという生命体が命取りになる。多少なら大丈夫だろう などという甘いものではない。本来であれば弾き返せるぐらいの小さな生命体を排除する力さえ病魔に支配され、命を落とす。それも簡単に。

 

飛行機のパイロットになることが夢だった君は今、どうしていますか。

楽しそうに飛行機を最上階から見上げる君はとても輝いていました。太陽よりも、光を反射しながら飛んでいく飛行機よりも。

君たちを乗せて世界中飛び回るんだ。初フライトに呼ぶから来いよ。

そう言ってましたね。いつか必ず、パイロットになって乗せて下さい。「その日」が来るまで僕は待っています。

 

 

忙しく学問に打ち込んでいた君は今、どうしていますか。 

今でもやはり学問を追求し続けていますか、師匠。師匠がこの世を去ってから約半年が経ちました。半年間、色々なことがありました。急にいなくなるからびっくりしましたよ。本当に。今でもがんになってよかったと言いたい…というか、がんになってよかったですか?師匠、あなたが人生最期をかけて自分自身に問いかけた質問の答えを教えて下さい。いつまで経っても解答用紙は空白のままです。必ず、解答しにきてくれると信じています。きっと、彼女さんもそれを望んでいると思います。

 

 

自分に何ができるのかずっと考えてきたが、所詮、人間は無力だ

こうやって、戦友がこの世を去るたびに手紙を書くのだが、毎回思い知らされる。(今回はご家族の同意が得られたものから抜粋)新型コロナウイルスが流行してから2年間、面会には行っていない。葬式にも行っていない。この世にあるのもすべてが自分の命取りとなりうる。今こうやってパソコンでブログを書いているが、キーボードの表面にも無数の菌は存在している。普通の免疫力を持つ人であれば、なんともないかもしれないが、僕ら病人からしてみれば、それが原因で命を落とすことは多々ある。

僕らは、抵抗する力がない以上、どうすることもできない。ただただ身体が菌に侵されていく姿を客観的に見ることしかできない。自分のことではあるが、もはや戦友が病と闘い、最期の姿であるようにまでもみえてしまう。結局、人間は目にすら見えないような菌やウイルスにすら勝つことは許されない。

 

2021年、沢山の人が亡くなった。本当に想像もしていなかったほどに。

身近な人も。そうでない人も。

 

僕がこの世に誕生してから早18年と6か月。

同じ日に生まれ、同じ様にNICU(新生児集中治療室)に入室した戦友はもうこの世にはいない。

18年の歳月が流れたんだ。当然といえば当然だ。そもそも「5年生存率」という言葉ある通り、5年間生ききれること、それが奇跡なのだ。5年間のあいだ、交通事故にあうこともなく、空から隕石が頭上にふってくることもなく、火災に巻き込まれることもなく、災害に見舞われることもなく、生きていられることが奇跡。

 

1年間にだいたい138万人が亡くなっている。 

そのうち、自殺者が2万人。

不慮の事故で亡くなる方は4万人。

孤独死する方は大体5千人。(死因は不問)

 

自殺で亡くなった2万人は救えたんじゃないか。そんな思考がめぐる。

不慮の事故で亡くなった4万人も救えたのではないだろうか。

 

自ら命を絶たなくても、人間はいづれ死ぬ。

それが50年後なのか、20年後なのか、明日のなのかはわからないが。 

生きてるだけではだめなのか。
泣いていても、怒っていても生きてさえいればそれで、それだけでいいんじゃないか。


笑っても泣いても生きていればそれだけでいい。
過ごした日々が何かに変わりいつか許せるようになるから。



生きたくても生きられない人がいる中で自ら命を絶ってしまう人がいるのは悔やまれる。
自殺志願者も僕らと一緒に戦ってほしい。
死と生の隙間に住んでいるという点では同じだと思っている。だから、どうか一緒に戦ってほしい。
無理に笑えだとか、今の状況を変えろだとか、そんなことは言わないから、どうか、一緒に明日を迎えてほしい。願うことはそれだけ。

去年、自ら命を絶った君も、一緒に明日を迎えてほしかった。 


沢山の人を失った年だった。
どうか来年からはそんな1年にはなりませんように。
それから、一人でも多くのひとが、1日でも長く生きられるそんな世の中でありますように。
僕の大事な戦友が自分の夢を掴んで、幸せな日々を送れていますように。

 


明日も生きよう。